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僕は今帰りの飛行機の中でこの日の日記を書いている。昨日の出来事、それはまるで秋の夜長の夢のようであまりはっきり覚えていない。でも体のあちこちが痛いからあれは夢じゃなかったんだろう。頭はまだすっきりしない。でも一つだけ言える事、昨日僕達は島を渡った。重い頭を起こし、微かな記憶を辿ってみよう。
あの日も朝起きるとあたりは真っ暗だった。空には数え切れないほどの星。つい見とれてしまう。ふと我に返る。今日が何の日だったか思い出した。パンやら果物やらを胃の中に詰め込み、ストレッチで体を起こす。そしていよいよ戦場へ乗り込む。
ハーバーへ着くとすでに多くの戦士達が集まっていた。彼らは楽しそうだった。が、目の奥にはやはり光るものがあった。皆この日のために死ぬほどトレーニングしてきたのだろう。そうでなければこの場には立てないのだから。
各チームがそれぞれスタート前にお祈りをし、海へ漕ぎ出す。長い長い戦いの始まり。100を越えるカヌーが1列に並ぶ。戦いの前の異様な静けさ。号砲を待つ。と、天を切り裂く轟音が鳴る。スタート。全てのチームが全力で漕ぎ出す。これから始まる長い長いレースの事など考えず全力で。僕達も全力でスタートしたが、身体能力の高い外国人達にパワーでねじ伏せられ、あっという間に差をつけられてしまった。だが焦る必要はない。戦いは始まったばかり。
45分後、いよいよ外洋に出て、ファースト・チェンジ。すでにスタートの遅れを取り戻すかのように、前に見えるカヌーを一つ一つ確実に抜いていく。並んだら絶対に負けない。外洋は驚くほど静かだった。乗れるうねりも少なくタフなコンディション。気持ちで負ければそこで終わり。とはいえ日本とは比べ物にならないコンディションである。日本でこれ程うねりや風が強い所はほとんどない。想像を絶するレース。それがモロカイ。
レース終盤、最もうねりの大きいココ・ヘッド沖へ。精神的にも肉体的にも限界を迎えようとし始め、レースはもはや気力勝負となった。それでも前方の視界に入るカヌーがあれば絶対に並び、そして抜く。自分でもどこにこんな力が残ってるんだと思うほど、皆力強くパドルしつづける。ハワイ・カイに入ると様々なルートに設定したライバルのカヌーが次々に見え始め、あっという間に周辺には5,6艇のカヌーが並んでいた。絶対に負けたくない、後悔だけはしたくない。その思いだけが体を動かしていた。1時間以上のデッド・ヒートを繰り広げ、ついにゴールのワイキキが見え始めた。その時生まれた気持ちは、早くゴールしたいという思いではなく、意外にも、このままもっとパドルし続けたいという気持ちだった。このままカヌーに載り続けたい。それしか考えられなかった。
そしてついにゴール。なんとも言えない感情が込み上げてきた。この場に仲間と共に立てたことを本当に嬉しく思った。多くの人のサポートを受けてこの舞台に立てたことを大変ありがたく、そして嬉しく思う。
僕の初めてのモロカイへの挑戦は終わった。でもすぐにもう一度モロカイに挑戦したいという気持ちが込み上げてきた。ゴールした次の瞬間に僕の2度目のモロカイへの挑戦は始まっている。来年またこの地へ立ち、そしてこの気持ちを味わう。その日まで、僕は振り返ることなくパドルしつづける。
OCCJクルー 磯貝
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